BL小説「虜」 辛い事実 「すまない…辛い事を聞いたな」 「ううん…」 フィラムは少しの間、俯いたが、すぐに顔を上げて。 「でも……ずっと、ばぁちゃんから言われてた『お前の父親は、お前に会えない理由があるから、会えないんだ』って、それに『お前の母親は、相手を心底、愛したから、あの薬を飲んで、そして相手も、お前の母親を愛していたから、お前が出来たんだ』って…」 祖母を懐かしむような声音で、そう言った。 アリファエルは、フィラムの頬を慰める様に撫でながら言った。 「私は、少しフィラムが羨ましい…」 「…何で?」 いきなり、羨ましいと言われたフィラムは、戸惑いを覚えた。 「それは…君が…両親に愛されて、望まれて、この世に産まれてきたからだ」 「……?」 その言葉の意味が、フィラムには分からなかった。 しかし、アリファエルの次の言葉に、フィラムは驚いた。 「私は、母からは愛されていない…」 「えっ…?」 「母は父だけを愛しているんだ。だが…父は、そんな母に、見向きしない」 [*前へ][次へ#] [戻る] |