BL小説「虜」 2 「ユリエス…、私は、どうすれば良いのだろうな」 どうにもならないと、分かっていながら、エキウスは呟く。 「私は、お前だけでなく、フィルデガルドまでも失うのか?我が子に、先立たれたのに、孫にまで先立たれるのか…」 セルネスであった我が子ユリエス。 その身で、子を成す事。 それが、どれだけ危険か知らないユリエスではなかった。 だが、それを知りながらも、ユリエスはある人物と恋に落ちた。 だが、ユリエスは、その恋心を周囲に隠した。 セルネスの自分とその人物とでは、身分差があった。 最初、ユリエスはその人物から逃げた。 だが、ユリエスとその人物は、結果だけを言えば、深く愛し合った。 そして、エキウスがユリエスの恋心に、気づいた頃には、ユリエスは薬を服用し、フィルデガルドを身篭った後だった。 勿論、エキウスは激怒した。 「ユリエス、お前という奴は、何を考えておるのだっ!!」 我が子を案じるあまり、まだ安定期前であると知ったエキウスは残酷な選択を迫る。 その選択こそ。 ー堕胎ー だが、ユリエスは自分の命を捨てでも、産むと譲らず、やり方は間違っているかもしれないが、ユリエスの決断を支持するという周囲からの声に、エキウスは根負けした。 「星が紡ぐ運命とは、皮肉なモノだな」 星は語る。 運命の輪が廻る。 ある者は愛の為に、死を選択した。 ある者は愛の為に、自らを捨てた。 ある者は忠義の為に、自らを捨て、心を手放した。 ある者は忠義の為に、自らの愛を置き去った。 ある者は忠義の為に、自らも、自らの愛も捨てた。 運命という目に見えない糸で引き合わされる人々。 [*前へ][次へ#] [戻る] |