BL小説「虜」 2 その優しく、頭を撫でてくれる手が言葉よりも雄弁に、相手の気持ちを自分へと伝えた。 (…お母さん…) そして、何よりも嬉しかったのは愛おしそうに、自分を見る眼。 その細められた眼に、確かな愛情があった事が嬉しかった。 この世にきちんと、生み出してくれたから……。 祖母の言葉があったから……。 自分は、母に愛されているんだと…ずっと、そう思ってきた。 でも、ずっと不安だった。 これが例え、夢でも構わない。 (お母さんっ…!!) フィラムは、感情のままに、抱き着いた。 すると、その人は嫌がる事無く、フィラムを優しく抱き留めて、また頭を撫でてくれた。 (お母さん…お母さん…) それしか、言葉が浮かばなかった。 何故、こんな事が起きているのか?と、他にも色々な事が頭を過ぎる。 でも、今のフィラムには、そんな事は、どうでも良かった。 これが夢だとしても今、目の前に母が居る。 それだけが、嬉しかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |