BL小説「虜」 執着 ガーメイル皇帝は、今でも、ある人物だけを愛している。 これは、ガーメイル帝国の上層部に居る人間ならば、誰もが知る秘密。 当然、その秘密を皇妃は知っていた。 だが、知っていて尚、皇妃は皇帝を愛している。 皇妃アデリアーデ。 ガーメイル四大名家の一つ北方大鷹の名を冠するテンバール家の長女として生まれた彼女は12歳のある時、初めて訪れた城で、三歳年上である当時、皇太子であった現皇帝のその優雅な立ち居振る舞いに、一目で恋に落ちた。 そして、それから後の彼女の行動は早かった。 まず、父であるテンバール公爵に、裏で様々な所に根回しをしてもらった上で、将来的に自分が皇太子妃になれるように仕向け。 表では、外見と内面を磨き上げ、積極的に慈善活動をして、自身の評判を高めていった。 そして、アデリアーデが18歳の時、彼女の念願は叶う。 が、これには一つ隠された真実があった。 これはアデリアーデは全く知らなかった。 当時、皇太子の妃には、二人の名が候補に上がっていた。 一人は勿論、アデリアーデ。 そして、もう一人は、リーフの第三王子クレミア。 幾ら、アデリアーデが、ガーメイルを代表する大貴族テンバールの姫君とはいえ、王族たるクレミアが相手では、問題にもならない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |