BL小説「虜」
2
だが、幾ら傷付いて欲しくない。
そうは思っていても、何をどうすれば良いかなんて、今のハービィには分からない。
本当なら、身分の違いを理由にして、諭してやるのが目上の者の役目なんだろう。
だが、そんな事を諭しても、意味なんてないと、ハービィには分かっていた。
あの二人を無理に引き離しても、意味はないだろう。
あの子は…。
フィラムという子は。
同年代の他のどの子よりも、聡い。
故に、お互いの身分の差が、悲劇を生み出すかもしれないと、分からない筈はない。
(……分かっていても…止められない…想い…か…)
フィラムよりも、年配者であるハービィは、身分の差が生み出す悲劇を嫌というほどに、知っている。
身分の差に振り回された揚句、最後には無残な形で捨てられた者を何人も、見てきた。
その度に、ハービィは自らの無力さを感じずにはいられなかった。
(…今まで…神様なんて、信じちゃいなかった…だけど…この世に…神様って、存在が…本当に居るなら…頼むから…あいつを…傷付けないでくれ……)
星を睨みつけながら、ハービィは、天に祈った。
星は、冷たい光りを放って、ハービィを見下ろしていた。
(…あいつを……失いたくない……)
その夜。
ハービィは、人知れずに、涙を流した。
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