BL小説「虜」 対峙 ガーメイル帝国ラグーシア城内のある一室。 そこには、緊迫した重苦しい空気が流れていた。 部屋の中で、向かい合う二人の貴婦人。 片方は、ナーサディナ。 もう片方は、アデリアーデ。 最初の口火を切ったのは、ナーサディナだった。 「アデリアーデ。もう、いい加減になさい」 「あら、お義姉様。一体、何がですの?」 そのアデリアーデの態度に、ナーサディナは眉を寄せた。 だが、アデリアーデは平然と。 「私、お義姉様みたいに、暇ではありませんの。御用件を早く、おっしゃってください」 そう言った。 今、アデリアーデは形だけの敬意をナーサディナに向けてきた。 アデリアーデにしてみれば、自分は皇妃だという自負と、幾らナーサディナが、皇帝の実姉でも、降嫁した以上は、自分よりも立場は下だという認識があった。 だが、ナーサディナはそこで、引く様な女ではない。 持っていた扇子をパチリと一つ鳴らし。 「随分と無礼な振る舞いをするものだな。たかが、皇妃の身分でありながら、最近のそなたの行動は、目に余ると聞いているぞ」 と、毅然とした態度で返した。 [次へ#] [戻る] |