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BL小説「虜」
一押し
あれから…。

幾度も‘母’が夢に出てくるようになった。


何も語らず、ただ抱きしめてくれる‘母’。

最初は、ただ単に嬉しかった。


だが、回を増す事に強まった思い。


フィラムに、芽生えた明確な意思。

このまま夢の中の‘母’に逃げている訳にはいかないという意思。







別に答えを期待した訳ではなかった。


(お母さん……ボク、分からない事があるんだ…この感情は、何なんだろう?あの顔を思い出したら、悲しくなって……切なくなる…ボク、分からないんだ…)

胸の中にあるモヤモヤした感情を吐き出した。


でも、この時。

今まで何も語らなかった‘母’が初めて言った。


(貴方が悩むのが、‘恋’ならば、思うままに、進めば良い…でも、それ以外なら、一人で考えても、良い考えは浮かばない……)

フィラムはびっくりして、‘母’を見上げた。

(…お母さん…)

‘母’はギュッと強く、フィラムを抱きしめて、言った。

(私の愛しい子…貴方と私を隔てるのは、私の死…だけれど、今……私が生きている間に……私は貴方を見れた…)
(えっ?)
(……大丈夫……貴方は、貴方の思う道を選べば良い……)
(お母さん…!)

その言葉とともに、‘母’の姿が次第に薄くなっていった。
そして、完全に消える間際。

(私は貴方を……愛していますよ…私達の‘フィラム’…)
と、‘母’は初めて名前を呼んでくれた。


フィラムは‘母’の姿が消えると同時に、目を覚ました。



「お母さんっ…」





その夜。

フィラムは涙が溢れて、なかなか、止まらなかった。





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あきゅろす。
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