BL小説「虜」
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その優しく、頭を撫でてくれる手が言葉よりも雄弁に、相手の気持ちを自分へと伝えた。
(…お母さん…)
そして、何よりも嬉しかったのは愛おしそうに、自分を見る眼。
その細められた眼に、確かな愛情があった事が嬉しかった。
この世にきちんと、生み出してくれたから……。
祖母の言葉があったから……。
自分は、母に愛されているんだと…ずっと、そう思ってきた。
でも、ずっと不安だった。
これが例え、夢でも構わない。
(お母さんっ…!!)
フィラムは、感情のままに、抱き着いた。
すると、その人は嫌がる事無く、フィラムを優しく抱き留めて、また頭を撫でてくれた。
(お母さん…お母さん…)
それしか、言葉が浮かばなかった。
何故、こんな事が起きているのか?と、他にも色々な事が頭を過ぎる。
でも、今のフィラムには、そんな事は、どうでも良かった。
これが夢だとしても今、目の前に母が居る。
それだけが、嬉しかった。
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