BL小説「虜」
再び
あの夜から、二週間が過ぎた。
ある夜。
アリファエルは、また庭園へと来ていた。
「行ってみるか……」
もう会えないと分かっていても、アリファエルの足は自然と、初めてフィラムと出会った場所へ向かっていた。
そして、アリファエルは、その場に着いた時。
驚きで一瞬、息を飲んだ。
「っ!?」
何故なら。
そこには、もう来ないだろう筈のフィラムが居た。
アリファエルが、足を踏み出そうか悩んでいると。
「っ…」
先に、アリファエルに気付いたフィラムが、茂みに近づきながら、言った。
「お願いだから、出て来ないで………今、アリーの顔を見たら、普通に話が出来なくなる…」
「フィラム」
「でも、顔を見なければ、知らないフリが出来るから…」
アリファエルは手を伸ばし、フィラムの顔に触れた。
フィラムは、その手に手を重ね更に言った。
「これが、今のボクの限界…」
そんなフィラムに、アリファエルは、フィラムの頬を撫でて言った。
「この距離が今の私達の限界なら、何時か……越えてみせよう……」
「アリー」
「だから、フィラム。歌ってくれ…私は、君の歌が聞きたい」
「…うん」
奏でられる旋律。
少しの前進。
小さな一歩。
今、幼い二人の心は動き出した。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!