BL小説「虜」 4 『おや……そうだったんですか…』 嬉しそうな表情を浮かべた相手に、彼女は。 『えぇ、そうよ……それよりも、貴方は一体何を分かったっていうの?』 と、続きを急かした。 そんな彼女に、相手は先程とは違った笑みを浮かべた。 『ふふふッ……』 すると、彼女は些か気分を害したらしく。 『あら、その笑いは何?随分と、余裕があるわね』 と、拗ねた表情を浮かべて言った。 『本当に貴方は自分に、正直な人で、可愛らしいと思っただけですよ』 本当に、可愛らしい人。 彼女には、時に年下の様な印象を持ってしまう。 実際は自分より五才も、年上で既婚者であり、一児の母親であるのに。 彼女は、わがままで、気強いと言われがちだが、実際は、とても優しい人。 そう友を心配して、ワザワザこんな辺鄙な所に来るぐらい優しい人。 『何よ。いきなり…私は、可愛らしくなんてないわ』 『そうですか?私は、そう思ったから、言ったまでですよ』 二人の間に、穏やかな時間が流れる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |