BL小説「虜」
2
『決して、一人にする気はありません……』
強い想いを伺わせる表情。
そんな相手を見ている内、彼女は泣きたくなった。
とても大事な友との別れが、速まってゆくのを感じずにはいられない。
確かな形。
この世に、残せるただ一つのもの。
だが、それを生み出す事に、この友の身体は適していなかった。
それでも、友は命を賭けて、それを生み出す選択をした。
『貴方が、セルネスでなければ……良かったのに……』
『マリー……』
何とも言えない表情を浮かべる相手。
彼女も、どうにもならない事を言っている自覚はあった。
でも、セルネスでさえなければ、この状態には、ならない。
セルネス。
それは、占いを生業にしている一族ガルバの中でも、特に卓越した星見の才を持つ者を指した言葉。
星の導きにより、様々な運命を紡ぐ預言者。
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