BL小説「虜」
母の現実
皇妃は今回、リーフ国へアリファエル自身が遊び相手を選びに行くのを最後まで反対していた。
他国。
それも、ガーメイルより格下の国であるリーフへ、皇太子であるアリファエルが、自ら行く事が許せなかった。
「この国の皇太子であるアリファエルを…あんな国へ行かせる必要はありませんわっ!!何かあったらどうしますのっ!!」
この言葉。
普通なら、ただ子供の身を心配している過保護な母親の発言に取れる。
だが、本当はそんなモノでは無い。
彼女が真に心配しているのは、己や己の実家の立場。
彼女は、夫どころか、自分にも、似なかった我が子を愛せなかった。
だが、我が子が大国ガーメイルのただ一人の世継ぎという事実が、彼女をある思いへと、走らせた。
似ても似つかない我が子。
彼女にとって、アリファエルという存在は、純粋な愛情を注ぐ存在ではない。
もはや、自分の権力を強固な物にする為の道具でしかない。
皇帝に愛されない皇妃。
その絶望から、彼女はある道を選んだ。
それこそが、我が子を傀儡の皇帝に据え、背後から皇太后となった自分が比類なき権力を振るうというモノだった。
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