BL小説「虜」
3
すると、相手は少し言いにくそうに。
「ボク?…ボクは…フィラム…」
と、小さな声で答えた。
「…フィラム……?」
その名は、今ではあまり使われない。
ある古い言葉を意味している。
名前としては、あまり使われない言葉。
そんな疑問が声に滲んで出ていたのだろう。
フィラムと名乗った相手は、些か泣きそうな声で。
「…やっぱり、変だよね…ボクの名前…『貴い』なんて、意味なんだもん…おかしいよね……」
と、言った後に、その場から立ち去ろとした。
すると、すぐさま、アリファエルは。
「フィラム。おかしくなんてない…君の存在は、君のご両親にとっては『貴い』から…その名を付けたんだ…」
と、声を掛けた。
「……そっ、そうかな?」
「あぁ…そうに決まってる」
迷いなく、そう断言したアリファエルに、フィラムは。
「えへへ……。アリーで、二人目。今まで、そんな風に言ってくれた人」
と、言った。
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