BL小説「虜」
2
今日こそは、相手の名前を聞く。
アリファエルは、そう思っていた。
だが、いざ聞こうと思うと、なかなか声が出なかった。
言葉にならなかった。
一体自分は、何を躊躇っているのか?。
それの明確な理由が分からず、アリファエルは苛立ちを覚えた。
そうしている間も、歌は続いた。
このままなら、あと一曲で、帰ってしまう。
明日も、来るかどうかは分からない。
アリファエルは、意を決して、声を掛けた。
「…名は?」
その瞬間、相手の肩がビックと、震えた。
「あっ…えっ?」
少し、パニックになっている相手へ。
「私の名は、アリーだ。名は?」
アリファエルは、咄嗟に普段は滅多に使わない愛称を口にした。
すると、相手は小さな声で。
「ア、アリー…?」
と、呟いた。
「あぁ、そな……いや、君の名は?」
いつもの癖で、そなたと言いそうになったアリファエルだが、すぐに言い直して、聞いた。
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