BL小説「虜」
4
辺りには、歌声と風の吹く音だけが響く。
暫くすると、歌声が止んだ。
「………」
歌っていた相手は、また何も言わず、走り出した。
走り去る背を黙ったまま見送るアリファエル。
「結局、名前を聞けなかったな…」
聞いてしまえば、何かが変わる。
自分には、それが良い事なのか、悪い事なのか分からない。
ただ多分、明日も来てくれるだろう。
アリファエルには、そんな予感があった。
「明日も、居るのかなぁ…」
その声には、少しだけまた来ないかなと含まれていた。
お互いの気持ち。
それが分かるには、二人は、まだまだ幼い。
自覚するのは、先の事。
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