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BL小説「虜」
3
それは、ある種の賭けだった。



もう、この場には来てくれないかもしれない。



来る確率は低い。


普段なら、確率の低い行動は取らない。


だが、何故だかアリファエルは、来るかもしれないという低い確率に賭けてみる気になった。







あの時と同じ時間、同じ場所。


ただ静かに、時間だけが過ぎてゆく。


やはり、昨日の今日では無理だったかと、アリファエルが諦めかけたその時。

ガサガサと枝を掻き分けて、こちらへと歩いて来る音が当たりに響いた。

(来た…)

またも、月明かりが陰り、アリファエルが居る位置からは顔が分からない。

しかし、絶対に昨日のあの者だという妙な確信が、アリファエルにはあった。





しばらくして、響く歌声に、やはりあの者だったと、安堵するアリファエル。



それは、ある意味で奇妙な図だった。

一国の皇太子が、茂みに隠れて、歌を盗み聞きするなんて。


だが、この場から、出ていったり、不用意に声を掛けたりしたら、また逃げられる。

そうアリファエルは、感じていた。






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