BL小説「虜」
2
「…だっ、誰?」
警戒した様子の相手に、アリファエルは、一体どうすれば良いか分からなかった。
「………」
沈黙するアリファエルに、名も知らぬ相手は痺れを切らしたのか、ダッと走り出した。
「あっ……」
そして、アリファエルが止めるより前に、その場から姿を消していた。
そして、その場に残された形のアリファエルは何だか、よく分からない感情に支配されていた。
顔は、よく見えなかった。
でも、あの歌。
途中からしか、聞いていないが、何か気になる。
聞いた事の無い歌の筈なのに。
何故か、懐かしく感じている自分が居た。
「また、来るだろうか…」
そう呟く、声は風に掻き消えるほどに、小さかった。
しかし、その声には、会いたいという気持ちが込められていた。
一方、あの場から逃げ出した相手は。
「はぁ〜…びっくりしたぁ…でも、あれって、誰だったんだろ?思わず、逃げて来ちゃったけど大丈夫だよね…」
と、疑問を抱きながら帰り道を歩いていた。
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