BL小説「虜」
突然に
バイスとのやり取りから数時間後の事。
アリファエルは一人で、リーフ王宮の一角にある庭園へと来ていた。
鬱々とした気分を取り除こうと、庭を散策していたアリファエルの耳に、何処からか声が聞こえて来た。
「これは…歌…か?」
普段なら、そんなモノ気にも止めないアリファエルだが、この時、何故だが声のする方へ歩き出していた。
そして、暫くすると、アリファエルは歌の主に辿り着いた。
よく耳をすますとそれは優しくも、悲しい歌。
どうやら、歌っているのは自分と同じ歳ぐらいと思われる者だった。
月が雲に隠れていて、顔はよく見えない。
だが、その者の腰まである髪は束ねられておらず、サラサラと風に揺れていた。
声を聞く内、苛立ち波立っていた心が、静かな気持ちになり、穏やかになってゆくのをアリファエルは感じた。
しかし、心地良い歌声に聴き入っていたアリファエルは不意に、足元の小枝を踏んでしまった。
パッキという音が、辺りに響く。
途端、その音で歌は中断された。
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