BL小説「虜」 2 我が子の死を知りながらも、あの友は笑っていた。 愛を知り、愛に生きる事を選ぶ我が子を誇らしいと、言った。 だから、今の自分にできるのは、真実を伝えることだけだと、マリアテレ−ズは思った。 死んだ者の気持ちを正確に、この子には伝えなくてはならない。 それが、この子を生かした自分の責任だから。 「フィラムよ…」 「………はい」 突然の事に、いまだ不安に揺れる瞳。 マリアテレ−ズは、小さく笑いながら。 「お前は、愛を受けて生まれてきた。お前の母親にとって、お前はこの世に残した何よりも大事な宝。だから、お前の名は‘フィラム’なのだ」 と、言った。 だか、フィラムはこう返した。 「で、でも……父さんには、他に…」 涙が自然に流れる。 自分が愛されているとはいえ、不義の子だと聞かされたのだ。 動揺していた。 そんなフィラムに、マリアテレ−ズが答えるよりも先に、リグレが言った。 「フィラム。私の孫よ。父親に他にも、子供が居るのを気にするなと、言った所で、それは無理な話だ。しかし、君が私の孫である事は間違いない。マリーが……彼女が君の大伯母である事も嘘ではない」 リグレは、更にこう続けた。 「私はね……君の父親を愛してやれなかったんだ」 「えっ?」 「君の父親にとって、君の母親は誰よりも、大事な人だ。死んでも、それは変わらない。愛に飢え、そして愛に絶望していた君の父親は、出会ってしまった。真実の愛に、目覚めた」 「だが、私は君の父親に無理矢理、結婚を強いたんだ」 「無理矢理?」 「あぁ、今にして思えば、バカな選択だ。しかし、君の父親は、初めて私に反抗したよ」 リグレは、目をつむった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |