BL小説「虜」
その行動と思い
元々、持ってきた荷物も少なかったフィラムは、与えられた部屋に少ない荷物を置くと、やることがなくなっていた。
「うーん」
クロスからは、好きに過ごせば良いと言われた。
だが、好きにしろと言われても、根が庶民であるフィラムには、何もする事がないのは、退屈だ。
「あっ!」
そんな中、窓から見えた景色に、フィラムは、目を奪われた。
「綺麗だなぁ」
フィラムは窓辺に近づく。
窓の下には、綺麗な庭園があった。
「そうだ!」
何かを思ったのか、フィラムは、部屋から出た。
フィラムが向かったのは、クロスの所だった。
クロスは、フィラムに笑いかけた。
「フィラム様。どうされました?」
「あの、お庭に出ても良いですか?」
「庭ですか?」
「ダメですか?」
残念そうな顔で、そう聞いてくるフィラムに、クロスは、笑みを深めて答えた。
「いえ、良いですよ。この館では、フィラム様の好きなように、お過ごしください」
すると。
「ありがとうございます!」
フィラムは途端に、パッと花が咲いたように笑った後、頭を下げて、部屋から出て行った。
そんなフィラムの後ろ姿に、クロスは。
(カーツ…)
と、故人を思い出していた。
(フィラム様の太陽のような笑みを見ていると、カーツ。お前の母上が、どれだけあの方を愛してくれたか、分かる気がする。いくら感謝をしても、足りないくらいだ。だが、今も言おう。ありがとう…お前がフィラム様を逃がしてくれたから、今がある。本当に、ありがとう)
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