BL小説「虜」
俺に、出来るだろうか?
「お、俺が…?」
「そうだ。ルース公が何を考えて、お子を連れてきたのかは分からないが、太皇太后様からは見極めよと、命が下っている。大丈夫だ、出来る。アレクシアよ。我等、リアーツの運命を決めるのは、お前だ」
セネガルの優しい眼差しを受けて、アレクシアは胸が熱くなるのを感じた。
「俺が…、命運を決める?」
「そうだ」
アレクシアは、目を閉じた。
そして。
「俺はリアーツの次期当主アレクシア。その俺が見極めるよ。隠し子様が、我等、リアーツの仕えるに値する方かどうか…」
強い決意を秘めた眼差しをセネガルに、向けた。
そんな息子の姿に、セネガルは、嬉しくなった。
(子供の成長は、早いな…)
腕に抱いて、守ってきた我が子。
幼い頃から背負わせてしまったリアーツの次期当主という運命を親としては、すまないと思ってきた。
血に染まった手が、我が子に触れる。
その怖さを知るのは、自分だけで良いと思ってきた。
だが、リアーツという名は、軽くはなかった。
今や、リアーツの名を名乗れるのは、本家に生まれたセネガルとアレクシアだけ。
(バカな兄貴達だ。家督争いで、命を落とすなんてな…それに、親父も、あんな形で死ぬなんて…)
セネガルの父の死因は、アルコールの過剰摂取による中毒死。
兄達による共謀で、父は呆気なく、この世を去った。
だが、父の死からは、兄達は、互いに争って、結局は亡くなった。
兄達には、妻も子も何人かはいたが、その誰もが兄達が死ぬと、リアーツから離れた。
妻達はリアーツの語られない名誉よりも、華やかな世界を望み、我が子には平穏を望んだ。
(俺の幸せは、あんたらの身勝手な行動で、壊れたんだ…)
セネガルが、過去に思いを向けていた時。
「母さん?」
アレクシアの声で、セネガルは現実に戻った。
「あっ…あぁ、何だ?」
「俺、今からルース公の屋敷へ行ってくる」
「今からか?」
「うん、まだ昼を過ぎたばかりだし、カレンディラに用があるフリして、見てくる」
「そうか、行ってこい」
「行ってくるよ」
部屋から出ていく、その後ろ姿を見ながら、セネガルは思った。
やはり、アレクシアは可愛い我が子だと。
その成長だけが、幸せを失ってしまったセネガルを癒していた。
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