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BL小説「虜」
その残酷な微笑みは
「父上。私の子は、いずれは尊き地位に座ります。なのに、母である私の縁者の中に、あんな身分卑しい庶子達が居ては、その子の枷になりますわ。早く処分を」


言外に、処分=抹殺しろと、そう含ませる娘に、テンバール公も、簡単には答えられない。

「う、うむ」

いくら、庶子とはいえ、我が子には違いないのだ。


だが、アデリアーデの。

「父上は、私よりも庶子達を選ぶのですか?いずれ、生まれる孫が可愛くはないのですか?」

という悲しげな声音と表情を浮かべる娘の姿に、負けた。


しかし、当事者である庶子達にしてみたら、アデリアーデの発言は、いい迷惑であった。



だが、テンバール公も、いくら、可愛い娘と、当時はまだ見ぬ孫の為とはいえ、我が子である庶子達を殺すという手だけは取れなかった。



その結果、年長の庶子達何人かは、テンバール公の教育が成功し、その才覚を買われ、世継ぎの居ない下級貴族の元へ養子という形で引き取られていった。

しかし、まだ教育中だったハービィと他何人かの庶子達は、母親達と共に、僅かな金を渡され、屋敷から追い出された。

随分な扱いだが、テンバール公も、テンバール公なりに考え、庶子達の母親には、慰謝料も含めた多めの金を渡したのだが、その金は途中で、着服されたという経緯があった。


この影には、またアデリアーデが関係していた。

だからこそ、テンバール公の耳には、女達は与えられた金に、満足して、屋敷を出たという話しか入ることは無かった。






他の庶子の母親には、身寄りがあり、何とか生きてゆく目処はついた。


しかし、ハービィの母親には、身寄りもなく、他の母親達も、生活に苦労していた為に、ハービィ達親子を助けられる余力はなかった。

当時、まだハービィは4才になったばかり、そんな中、リーフ国は景気が良いと噂で聞いたハービィの母親は、僅かばかりの金を使って、リーフ国へやってきた。


そして、ハービィの母親は、住み込みの仕事を見つけると、必死に働いた。


しかし、運悪く一年後、流行り病に倒れ、すぐに亡くなってしまった。


この時、ハービィ5歳。
他国で、身寄りもないハービィは、こうして、カストル孤児院へ引き取られる事となった。





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