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BL小説「虜」
答えなど、本人に聞かなければ分からない
(あれは、身分違いの恋。どんな理由があっても、せルネスと皇族に属する者は愛し合ってはならない)



それだけは決して、誰であろうと、破ってはならない。



(アレが例え、世継ぎの身分になかったとしても、婚姻相手に、せルネスだけは選べない。せルネスとの子など、生まれてはいけない)



だが、リグレは知っていた。

禁忌の存在。


皇太子ゼルフィードとせルネスであるフィルデガルドの間に生まれた子供の存在。


(何故、手を貸した?この国にとって、あの‘存在’は許されない)



(マリアテレーズ。何故だ…)




だが、いくら考えても、一人では明確な答えなど出ない。


リグレは、ある事を決めた



「サーシャ」

リグレが呼ぶと、部屋の片隅に立っていた一人の年配の女が答える。

「はい」


サーシャ・ナレガレダ。

彼女はリグレが在位中、城で侍女長として働いていたが、リグレの退位と共に、侍女長の職を辞した後、リグレの侍女として、側に居る事を選んだ。


「太皇太后に…、会いに行く…準備を頼む」

「…分かりました」

サーシャは、一瞬だけ驚きを顔に出したが、すぐに頭を下げて、部屋から出ていった。




(リグレ様が…マリアテレーズ様に、お会いになる)


サーシャは、リグレの侍女として、長く側に居るが、リグレ自らがマリアテレーズに会いに行くのは、今回が初めての事。


(だが、準備をと言われても、会いに行くだけならば、相手側に、使いを出せば、それで終わる筈。私に、準備をしろと言われた意味は?…あっ、そうね…)


そして、そこでサーシャは、リグレの言外に含んだ意図を読んだ。



(うふふ。そういえば、マリアテレーズ様は、あの果酒を好まれていたわね)


そして、使いを出した後、サーシャは、準備に奔走した。






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