BL小説「虜」
〜父の独白〜
ガーメイル前帝リグレ・フィル・ガーメイル。
彼はある決断をした事で、国内外から注目された人物。
通常、皇位継承は皇帝の死をもって、行われるのだが、リグレはある時、突然に退位を宣言し、毛嫌いしている息子ゼルフィードを皇帝に指名した。
当時、周りの予想では、ゼルフィードとは三才しか差がない叔父が有力な皇帝候補の一人であった。
だが、結果は違った。
当のゼルフィードも、突然の出来事に、困惑したそうだ。
リグレは退位を宣言してすぐ、城から遠く離れた地に、小さな離宮を建てさせた。
そして、その離宮で在位中では考えられないほどに、心穏やかな日々を手に入れた。
リグレは在位中は常に、何かにつけて、怒りに支配されていた。
しかし、権力から離れた途端、彼は生来の明るさを徐々にとだが、取り戻していた。
彼は、ある時期から全てがどうでも良くなっていたのだ。
マリアテレーズによく似た腹違いの有能な弟を見る度に、リグレは苦しくなった。
失った物の大きさが彼を変えていた。
そして、確かな血の繋がりを感じながら、どうしても、愛せない我が子を前にすると、怒りに支配された。
もはや、修復不可能にまで、拗れた親子関係。
自分を見るその顔に、どうしても、憎い人の姿が重なるから、リグレは苦しくなった。
(ゼルフィード。何故、お前は、そんなにも父上に似たのだろうか?。我はお前にすれば、酷い親であろうな。他者がお前の名前を呼ぶ事すら禁じた)
しかし、ゼルフィードが自分に似ていなければ、愛せたか?と、聞かれても、リグレには答えられない。
だが、若い頃のゼルフィードの少しの変化を最初に、気づいたのは、リグレだった。
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