BL小説「虜」 2 ゼルフィードの母シュレーナは父帝の妻として、先帝であるザナルダレル自らが選び出した者である。 好色として、知られていたザナルダレルだったが、マリアテレーズを妻としてから、性格がガラリと変わった。 他人の幸せを踏みにじってまで、手に入れた娘に、ザナルダレルは溺れた。 その溺愛ぶりはあまりにも有名だった。 ゼルフィードも、祖父帝のマリアテレーズに対する溺愛ぶりを見聞きし、マリアテレーズが元は別の人間の婚約者だったとは知っていた。 だが、ゼルフィードはマリアテレーズが、誰かの婚約者だった事は知っているが、それが誰だかを知らない。 だが、母シュレーナがマリアテレーズを憎く思っているのは、ゼルフィードも知っていた。 対極の二人。 愛された女と愛されない女。 愛せない男と愛されたい女。 愛している男と逃げたかった女。 四人の人生、変わっていった未来。 その先にあるのは、愛を知らない皇子と愛を与えられない星詠みの出会い。 父親からは、敵意。 母親からは、無関心。 敵意という感情が、無関心という猛毒が、ゼルフィードに孤独を与えてきた。 だが、そんなゼルフィードにも、マリアテレーズのおかげで、かけがえのない友が出来た。 孤独と無関心という毒から、ゼルフィードは少しだけ解放された。 [*前へ][次へ#] [戻る] |