BL小説「虜」
それはある考え
フィラムは、少しだけ冷静さを取り戻し、クロスへ聞いた。
「僕のお父さんは本当に、生きているんですか?」
真実を知りたい。
強くそう思った。
クロスは、それに答えた。
だが。
「はい、ご存命です。ですが…」
と、言葉を濁した。
「ですが、何ですか?」
クロスは、臆する事なく、自分を真っ直ぐに見つめるフィラムを前に、また過去が頭に過る。
(あぁ、そうでした。貴方様も、真っ直ぐに人の目を見る方だった…本当に、よく似ている。血という繋がりは、やはり濃いのですね)
クロスはフィラムへ更に残酷な真実を告げるべきかを少し悩んだ。
だが、自分を真っ直ぐに見つめるフィラムを前にして、クロスは残酷な真実を。
「確かに、生きておられますが、お父上様に…、フィラム様。貴方様が会う事は出来ませぬ」
と、静かな声音で告げた。
「会えない?何故ですか?」
それは当然の質問。
クロスは、どう答えようか?と、少し思った。
しかし、今更、誤魔化した所で、それには何の意味もない。
クロスは、そう考え直した。
「貴方様のお父上様は、我が国にとって、誰よりも貴き方です。あの方は、私情で動かれる方ではありませぬ」
更に、クロスは続けて。
「フィラム様。貴方様はとても愛されています…、ですが、貴方様の存在は公にはできませぬ」
と、悲しげに言った。
そんな父親を見て、カレンディラには、考えた。
(我が国、つまりはガーメイルで、セルネス様よりも、貴い方…?)
そして、ある可能性に気付く。
「えっ?…ま、まさ…」
思わず、口を手でおさえ、今、自分は何を考えた?それは、あり得ない!?。
そう思いながらも、カレンディラの中には、ある考えが生まれた。
「ち、父上」
カレンディラは、慌ててクロスを見る。
この短い時間で、真実に辿り着いただろう娘に、クロスは。
「カレンディラ。お前には、帰ってから改めて詳細を伝えるゆえ、今は黙っておれ」
と、言った。
「は、はい」
そして思わず、カレンディラは、フィラムから視線を外した。
「えっ???」
一人だけ、状況が分からないフィラムは、困っていた。
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