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BL小説「虜」
記憶の中の人
クロスは、フィラムを見て、ある人の幼い頃を思い出した。

(あぁ、神よ…)

そして、確信が欲しくて、クロスは聞いた。

「そ、そこの子供、名を何と言うのだ?」

「…えっ?」

いきなり、そう聞かれて、フィラムは反応できなかった。

カレンディラは、不思議に思いながらも、戸惑っているらしい父親に言った。
「この子は、フィラムって、名前よ」

「っ!?…そうか…」

(あぁ、フィルデガルド様…)

「父上、どうしたの?」
カレンディラがそう聞くが、クロスは答えず、動いた。

その行動に、フィラムとカレンディラは驚いた。

「えっ?」
「ち、父上!?」


「フィラム様、私の生きている間に、お会いする事はないと、そう思っておりました。我等は貴方様が遠き地にて、ご健勝であれば、それで良かったのです」

なんと、クロスはそう言うと、フィラムの前で跪き、頭を深く下げたのだ。

更に。
「貴方様は本当に、お母上様に、よく似ておいでだ。フィラム様。もはや、沈黙は無駄な事ですね。…この墓に眠るは…我が最愛の妻でございます。かつて、妻はお生まれになった貴方様を守る為に、この村へと帰ったのです」
と、驚くべき事を口にした。



「父上、どういう事ですか?」



カレンディラは、驚きで固まるフィラムを見て、代わりに問うた。

「そうだな…、カレンディラ」
「はい、父上」
「お前も、もう9才。真実を知るには良い機会だな。では、村長に言って、部屋を貸してもらおう。寒空の下で話す話ではないからな」










村に戻り、村長へ事情を話した上で、村長宅の一室を借りた。



茶を出そうとする村長夫人へ。
「茶は良い。話が終わるまで、この部屋に近づかないでくれ」
と、言った。




そして、部屋の中に入り、椅子に座ると、クロスは。
「さて、何からお話しすれば良いでしょう。フィラム様。何が、お聞きになりたいですか?」
と、フィラムに聞いた。それに対して、フィラムは言った。

「一体、貴方は誰ですか?」
「私は、クロスと申します。ガーメイル帝国四大貴族が一翼、ルース家の当主でございます。これは娘のカレンディラです」
カレンディラは黙ったまま頭を下げた。

「ク、クロス様にカレンディラ様ですか?」
他国とはいえ、貴族である二人に、フィラムは緊張しながら、そう聞いた。
しかし、それに対して、クロスは言った。

「フィラム様。どうぞ、私の事はクロスとお呼び捨てください」
「えっ?」
「フィラム様。貴方様は、とても貴きお血筋のお方です」

そんな父親の言葉に、カレンディラは驚いた。


(この子は一体、何者なの?)



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あきゅろす。
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