BL小説「虜」
それは必然なのだろう
朝早くから、フィラムは母の墓が見える位置にある茂みに隠れていた。
そして、太陽が顔を出し始めた頃、一つの人影が近付いてきた。
だが、フィラムはその人影を見て、少し驚いた。
(えっ?)
その影の正体は、フィラムが予想すらしていなかった。
(女の子…?)
他の人の墓に用があるのか?と、そう思ったが、その女の子は、真っ直ぐに、母の墓の前まで歩いてきた。
そして、少女は母の墓へ静かに手を合わせた。
訳がわからず、フィラムは、思わず立ち上がった。
ーガサガサっー
その音に少女は驚き振り返る。
「だ、誰っ!?あっ…」
少女と目が合った。
目の前の名も知らぬ少女へフィラムは言った。
「僕はフィラム。この先の村の者だ。君こそ、誰なんだ?この墓に何の用?」
すると、少女は名乗った。
「私の名はカレンディラ。カレンディラ・タルラ・ルースよ」
そして、カレンディラは、驚くべき事を口にした。
「このお墓には、私のお母さんが眠っているの」
「えっ…君のお母さんの墓?」
驚くフィラムに、カレンディラは言った。
「えぇ、そうよ。お母さんのお墓は、国から離れているから、ずっと父上だけが来ていたのだけれど、やっと父上が私を連れてきてくれたの」
「ち、父上?」
「そうよ。あっ!」
カレンディラは突然、振り向いた。
その方向に、視線を向けると、そこには、ゆっくりとした足取りでこちらに歩いてくる男の姿があった。
その男こそ、カレンディラの父親クロス。
「父上!!」
カレンディラは、クロスの元に走りよる。
「カレンディラ。はしたないぞ」
「だって、嬉しいのだもの」
(どういう事…?訳がわからないよ…)
親子のやり取りを見ながら、フィラムは混乱した。
そんな中、クロスはフィラムに気付く。
「ん?……っ!?」
クロスは、驚きで目を見開いた。
(ま、まさか…)
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