BL小説「虜」
親世代は沈黙し、子供世代が動きだす
アリファエルは、カレンディラへ淡い微笑みを向けると、その場の五人の名前を順番に呼んだ。
「クレアシア」
「はい」
「アレクシア」
「はい」
「カレルカル」
「おう」
「カレンディラ」
「はい」
「ルキウス」
「はっ」
「私はお前達に、改めて言いたい事がある」
五人はアリファエルの言葉を待つ。
すると、アリファエルは静かに頭を下げた。
その行動に。
「「「殿下!?」」」
と、声を出したのはクレアシアとカレンディラとルキウス。
「おい、なんなんだ?」
とは、カレルカル。
「……へぇ?」
とは、アレクシア。
アリファエルは頭を下げたままで。
「どうか……この私に、皆の力を貸してほしい」
と、口にした。
「殿下っ!!どうか、頭を上げてくださいっ!!」
クレアシアが、そう慌てて言うと、ルキウスが。
「我らは、殿下の臣下にございますっ!!殿下が我らへ頭を下げる必要はございません!!どうか、頭を上げてください!!」
と、言い。
カレンディラは。
「殿下…」
と、言うだけで、驚きで次の言葉が出なかった。
そんな中、カレルカルは思った。
(おいおい、どうして、こうなるんだ?従兄弟殿よぉ…この展開は俺の予想を上回ってるな)
現皇帝の妻たる皇妃が突然、廃された上に、廃妃となった元皇妃が、すぐに死去した為、今の国内状勢はあまり良くない。
皇太子アリファエルをその座から、退かせようとし、皇帝に新しい妻と新たな子供をと動き出す勢力が、ガーメイルでは幾つかある。
(プライドの高い従兄弟殿が、簡単に頭を下げるとはな。まぁ、そんだけ、本気になったってわけか)
そして、アレクシアは、アレクシアで、この事態に笑い出したくなっていた。
(ふ〜ん、まさか…俺にまで、頭を下げるなんてなぁ。皇太子様も、必死だよねぇ)
本来、アレクシアは主無き剣であり、今は太皇太后に命令されて、一時的に皇太子の側に居るだけだ。
(…まぁ、太皇太后様からは、皇太子様の力になれと命令されてるし、力添えを頼まれても、嫌とは言わないけどさ…)
元は四大貴族の出ではあるが、今のアレクシアはリアーツの人間。
リアーツが忠節を誓うのは、時の皇帝でも、皇太子でも無い。
(俺の代で、本当に本来の主に出会えるのかなぁ)
と、アレクシアは考えてしまった。
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