BL小説「虜」
嘆き
今でも鮮明に、思い出せるわ。
あの日、私は初めて貴方にお会いしたの。
貴方にしてみたら、いつも通りの型に嵌まった事だったのでしょうけれどね。
「はじめまして、テンバールの姫君」
その日、共に来ていたローゼンギル家の末娘なんて、貴方の微笑みに見とれて、会釈すら忘れていたわ。
私、分かっていたの……。
貴方は、私達をただの貴族の娘としか見ていないって。
貴方は、どんなに美しい方にも、皆に向けるのと同じ笑みを向けていた。
聡い方々は、貴方の真意に気付いていたから、深入りせずに、上辺だけを取り繕っていた。
でも、私はそれが嫌だったわ。
貴方に私を見てほしかった。
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