[携帯モード] [URL送信]

BL小説「虜」
嘆き
今でも鮮明に、思い出せるわ。


あの日、私は初めて貴方にお会いしたの。

貴方にしてみたら、いつも通りの型に嵌まった事だったのでしょうけれどね。


「はじめまして、テンバールの姫君」


その日、共に来ていたローゼンギル家の末娘なんて、貴方の微笑みに見とれて、会釈すら忘れていたわ。


私、分かっていたの……。


貴方は、私達をただの貴族の娘としか見ていないって。


貴方は、どんなに美しい方にも、皆に向けるのと同じ笑みを向けていた。


聡い方々は、貴方の真意に気付いていたから、深入りせずに、上辺だけを取り繕っていた。


でも、私はそれが嫌だったわ。


貴方に私を見てほしかった。




[*前へ][次へ#]

7/11ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!