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BL小説「虜」
喜び
カレンディラは心から思った。

(良かった…本当に、良かった)

皇太子アリファエル。

彼の悲しさと寂しさを知っているからこそ、カレンディラは喜んだ。


自分では、真にアリファエルを支える事は出来ないと、分かっていた。


愛を渇望し、声なき声で、叫ぶアリファエルを知っていた。



(私には、亡くなったという母上の記憶はない。でも、父上だけだったけれど、私は愛されて育ってきた。けど、殿下は違う)

幼くても、理解できる事はある。

今は亡き廃妃アデリアーデは、自分の子供を純粋に愛してはいなかったと、肌で感じた。

カレンディラは、アデリアーデという女性から、母親の愛というモノを感じなかった。



カレンディラが生まれてすぐに、母親は死んだと聞いた。

それでも、母親がカレンディラに遺してくれた数々の自分へ宛てた手紙があった。

書き出しはいつも、愛しい娘へとあった。

父親であるクルスも、カレンディラへ。


「お前の母親は、お前を誰よりも愛していた」

と、何度も言っている。


(前に殿下は、愛されない自分が悪いのだと、そう言われていた)



愛され、温もりに包まれて生きてきたカレンディラと母親から物のように見られてきたアリファエルは全てを諦めて、生きてきた。


そんなアリファエルが愛する者を見つけたという。


だからこそ、カレンディラは。

「おめでとうございます。このカレンディラ、微力ながら、その方のお力になりたく存じます」


と、頭を下げた。


その行動に隣では、ルキウスが驚いた顔をし、カレルカルは優しく笑っていた。

アリファエルの後ろに居るクレアシアとアレクシアは、全く違う表情を浮かべていた。


クレアシアは、文のルース家が、アリファエルの愛する者を支援すると言外にだが、口にした事に、驚いていた。


アレクシアは、共に力を合わせる相手が出来たと、笑った。





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あきゅろす。
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