BL小説「虜」
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そんな村長に、フィラムは言った。
「村長!教えてください!」
村長は、深いため息を吐き出すと、語り始めた。
「…お前の母親の墓に、ユフィリアやその造花を供えていた方。それは…あの方は、ガーメイル帝国の貴族様だ」
「貴族様?」
意外な答えに、フィラムは驚いた。
村長は、更に言った。
「あぁ、先程も言ったが、私は若い頃、従者としての仕事をしながら、ガーメイルの学校で、色々な事を学んだ。あの方とは、その頃の縁で顔見知りなのだ」
「その貴族様って、誰なんですか?」
続きを聞きたがるフィラムに、村長はまたため息を吐き出して、言う。
「あの方の今のお立場が、どのようなお立場かは、こんな田舎の村の村長である私には、分からない。だが、あの当時のあの方の身分は分かる。あの方は、ガーメイル帝国四大貴族の一翼たるルース家の次期当主様だった」
あまりの驚きに、フィラムは一瞬、息を飲んだ。
「……っ!?なんで、そんな人が…なんで…母さんのお墓に花や造花を供えているんですか?」
当然の疑問に、村長は言った。
「これは、私の憶測でしかないが…聞くか?」
「は、はい!」
「お前の母親カーツは、小さな頃から、手先が器用で、物覚えも早くてな。お前の祖母、つまりはカーツの母親のツテで、10才の時、リアガという地方都市の飾り職人に、師事したのだ。そして、才能があったのだろう。カーツは師事して数年で、飾り職人として、高い評価を周りから受けた。腕の良い職人には、貴族が後ろ楯となる事は少なくない。ここまでは分かるな?」
「はい」
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