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BL小説「虜」
墓参りと分かった事
あれから、ハービィが色んな所と交渉してくれたおかげで、フィラムは二年ぶりに、祖母と母の墓がある村に帰ってきた。



出発の朝、ハービィからは。

「きちんと、二人にこれまでの事を報告してこいよ!」

と、頭を撫でられて言われた。



城に来る前のフィラムは、自分はもう一人だと思っていた。


だが、今は違う。


今のフィラムには、城の下働き達が家族なのだ。








祖母と母が眠る墓は、村の共同墓地にある為、二年ぶりに墓参りするとはいえ、墓の周りは草なども生えておらず、綺麗に整っている。








「あっ!!」

フィラムは、母の墓の前に来ると、供えられたある物を発見した。

今の季節は冬。

だからだろ。母の墓の前には、ユフィリアを象った造花が手向けられていた。




「一体、誰が供えてるんだろう?」


誰だか知らないが、今でも母を愛する人が居る。
それだけは分かっていた。


フィラムが村を離れて、二年。

あの手向けは、絶える事なく続いていると、墓参りを終えたフィラムが挨拶に行った時に、村長から聞いた。


「村の者の話では、最近では、ある決まった日にも、ユフィリアかユフィリアの造花が供えられているそうだ」
「決まった日にですか?」
「あぁ、お前の母の月命日にも必ず、供えられいるようだ」
「そうですか…誰が供えているか、分かりますか?」

すると、村長は言いにくそうに、答えてくれた。
「心当たりが…無いわけではない」
「ほ、本当ですかっ!!」
「あぁ、私の記憶違いではなければだがな…。私はお前の母の月命日に、墓を見張った事がある…そして…その時に、見たのだ…あの方を…」

ここで、村長は言葉をつまらせた。

「村長?」
「………。私は父である前村長がまだ生きていた頃、この国の外で働いていた事があるのだよ。だから、分かったのだ。お前の母の墓に、供え物をしていた人物に、私は若い頃、会った記憶がある」
「っ!?」

フィラムは驚きで、声が出なかった。

「村の者から、お前の母の墓へ月命日と命日にユフィリアかユフィリアを象った造花を手向ける人物の容姿を聞いた時は確信はなかったが、実際にその姿を見た時は、驚いた。何故だ?なんの為に?と思った」
「……それは…誰だったんですか?」
「フィラム。私は若い頃、この地帯を治める領主であるガダルカール様のご子息マスカール様がガーメイルにある学院へ入学された時、ガダルカール様の温情で、マスカール様の従者の一人として雇われた事があったのだ」

ここまで言うと、また村長は言いにくそうな顔をした。



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あきゅろす。
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