BL小説「虜」
手向けの花の意味
ユフィリアという花。
春に赤く色づくその花は、愛の印として、大陸では知られている。
リーフでも、恋人同士や夫婦の間では、ユフィリアの花か、ユフィリアを象った品物を相手の誕生日に贈るのが一般的である。
フィラムがこの花の事を知ったのは、母の命日の日、母の墓に誰かが、その花を手向けていたからだった。
いくらなんでも、その花を祖母が供える訳はなく、母と親しかった村の者の可能性はあったが、あの村で、そこまでの思いを持った人間が居たなら、フィラムは村を出てはいないだろう。
だから、村の者の誰かという筈はない。
一体、誰なのだろう?と、単純に村にいた頃は、思っていた。
しかし、花の花言葉を知った時、あれは父が供えているのではないか?と、そう思うようになっていた。
フィラムが気付いた時には、既に母の墓に供えられていた花。
月命日の度に、墓を訪れていた祖母なら、何かを知っていた可能性もあった。
だが、この花の事には、祖母は口を閉ざしていた。
フィラムが何を聞いても、知らないと言った。
ー貴方を想うー
それは万感の思いに溢れた言葉。
自分の父は、どういう人なのだろう?。
母は、その人に恋をして、愛して、その人の子供である自分を産んだ。
一体、両親に何があったのだろう?。
何故、母は無理をしてまで、産まれたばかりの自分を連れ、故郷へ逃げるように帰ってきたのだろうか?。
その理由が分からない。
この世には、恋や愛だけでは、どうにもならない事があるのだと、今のフィラムなら、分かる。
自分が父から望まれて産まれたのは、男である母が薬を飲んだ時点で、分かっている。
だが、理屈では片付かない何かがあるのだ。
母と父。
二人の間で、何かが起きたのは、間違いないだろう。
それを知りたい。
母の過去を知りたい。
父の真意が知りたい。
この二年の間に、アリファエルが変わったように、フィラムも変わった。
二年前までは、両親の事に、あまり興味はなかった。
だが、今のフィラムは両親の事を知りたいと思うようになっていた。
父が知る母を知りたい。
父が自分をどう思っているのか知りたい。
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