BL小説「虜」
3
この二年で、フィラムは自覚した。
アリファエルを想うと、胸に淡い感情が浮かぶ。
これを人は、恋と呼ぶのだと、理解した。
しかし、アリファエルとの間に、大きな身分の差があるのをフィラムは、分かっている。
だが、心で相手を思うのは、自由ではないか?。
そうこの二年で、考えるようになった。
だが、自分の想いが叶うなんて、そんな事は思わない。
この二年で、フィラムは、現実を知った。
この世には、個人の様々な思いが叶わない事の方が多い。
自分は無力だ。
平民と皇族。
それは叶う筈のない恋。
幼い想い。
アリファエルと違って、平民のフィラムは、諦めを知った。
平民がどれだけの努力をしても、身分の差だけは、埋まらない。
時間が淡い感情を消すまで、何年掛かるか分からない。
しかし、消さなければ、生きるのが辛いと、それだけは分かった。
だが、この時のフィラムは、知らなかった。
この二年もの時間で、アリファエルが想いを叶える為に、努力している事を知らなかった。
ただ淡い恋を糧にして、フィラムは生きようとしていた。
この先、フィラムはもし、誰かと恋をしても、誰かを愛しても、消えないだろう想いを胸に抱いた。
お母さんも、こんな気持ちだったのかな?。
と、最近では思う。
恐らく、母は身分違いの恋をし、父を愛したのだろう。
その証が自分なのだ。
そう思うようになっていた。
それは辛い恋だったのだろうか?
それとも、幸せな愛だったのだろうか?。
母は、父の事を何も語らず、死んだ。
母は、どんな想いで、恋したのだろう?。
母は、どんな想いで、愛したのだろう?。
それを知りたい。
そう思うようになっていた。
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