BL小説「虜」
2
毎日、灰と煤をかぶり、泥に汚れる。
だが、それを嫌だと、フィラムは思わない。
灰と煤に泥、それらは、自分の色を隠してくれる。
他国人が多く滞在するリーフ国の城下町でも、銀という色は、目立つ。
「我が家の家系には、お前以外の銀髪は居ない」
と、そう生前、祖母は言っていた。
ならば、自分の髪の色は、見も知らぬ父親からの遺伝という事だ。
「遺伝するなら、もっと普通の色が良かったな」
と、育った村にいた頃は、そう思っていた。
だが、それは二年前までの事。
今では、そんなに気にならない。
逆に、銀色で良かったと、思うようになっていた。
それは単純な事。
「フィラム。君の髪は、美しいな。月の下がよく似合う色だ」
そう二年前、アリファエルに、誉められたからだ。
それと、同時にアリファエルは。
「だが、銀は目立つ。私は心配だ」
「君の魅力を他人が知るのは、嫌だ。私だけが知っていたい」
と、そうも言った。
だから、フィラムはアリファエルの為に、今まで以上に、隠す事にしたのだ。
周りも、フィラムの可憐な色を隠す方向だった事から、フィラムが自分から髪の色を隠そうとする事を怪しまなかった。
煤、灰、泥は、髪の色をくすませ、白い肌を黒く見せた。
しかし、その隠蔽工作も、この頃では、日に日に、難しさを増していた。
フィラムは、美しさの原石。
どちらかと言えば、髪の色以外、フィラムは美しいと評判だった母に似ているのだそうだ。
その美しさから、何処かの貴人に見初められたのだろう。
そう生前の母を知る村の人は言っていた。
よく祖母は、悲しそうな顔で、母の話をフィラムにした。
「あの子は、お前の母親は幸せだと言っていたよ…お前という宝を授かって、産めたからとね…高熱にうなされながらも、お前を心配していたよ」
それを言われた頃は、半信半疑だった。
だが、今は疑わない。
今なら、自信を持って言える。
自分は、愛されて、望まれて、この世に生まれたのだと。
そう断言できる。
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