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BL小説「虜」
皇帝から見た皇太子
子供の成長。

それを感じれる程、父親として、子供の側に居たわけではない。

だが、それでも感じ取れる事はある。

二年前の皇太子と今の皇太子。

その違いに、皇帝は驚かされる。

皇太子に一体、何があったのだろうか?。





二年前までの皇太子は、母親の支配下に置かれ、心身共に身動きの取れない状態だった。

その状態が長く続けば、悪い結果を生む。


だから、前皇妃の支配が及ばない国外に出した。


皇太子に、何か良い変化があればと思った。


皇太子にしてみれば、突然の事、意味の分からぬ旅であったろう。


しかし、あのままでは、皇太子の成長に良い環境では無い。


民を導く指導者として、自らが気付かなければならない事もある。


あのまま国に居ても、何も変わらない。


だから、皇帝は自分にとって、思い出深いあの国に、皇太子を行かせたのだ。


何度、帰国したいと文を出されても、許さなかった。




だが、事態は変わり、予定より早く皇太子を呼び戻さねばならなくなった。


二年前、慌ただしさの中、皇帝は帰国した皇太子に会った。

その瞳には、旅立った時にはなかった強い想いが宿っていた。


親として、初めて子供の成長を眼にした。
その瞬間、皇帝は鈍い痛みが胸に広がるのを感じた。


子供とは、成長するスピードが早いのだと、気付かされた。



思い返してみれば、皇帝は親でありながら、皇太子に親らしい事を殆どしていない。

ただ次代を担うに相応しい知識と見識を持て。

それしか、教えいない。


だが、だからといって、何をどうすれば良いかなど、皇帝には分からない。


皇帝も、父親という存在をあまり感じずに生きてきたからだ。


父親である前帝には、ただ皇帝となる事だけを望まれた。


気付けば、自分も同じ事をしている。


皮肉な運命だと、思った。


愛という感情は、死者へ捧げた。


誰も、愛せない。


それが子供だとしても、変わらない。


皇帝は皇太子を子供ではなく、皇太子としてしか見れない。



皇帝は不器用な男。

だが、それを知っているのは、バイスを始めとして側近達だけ。



不器用故に、心を偽れない。


偽物の愛情など、向けられない。

偽物の愛情でもいいから、欲しいと願った前皇妃。

だが、それすら叶わず、前皇妃は死んだ。


だからこそ、皇帝に出来るのは、皇太子を立派な皇帝とする道を作る事。


愛せない変わりに、不器用なりに、皇帝は皇太子を気にかける。


皇太子も、この二年で、分かってきた。


不器用な皇帝の心を。


現実を受け入れる強さを皇太子は手に入れていた。





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あきゅろす。
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