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BL小説「虜」
残酷な真実と偽りの真実
廃妃アデリアーデ死亡。


その知らせを聞いた皇帝は、少しの驚きと同時に、その死にある疑念を抱いた。



アデリアーデの死因は服毒死。


しかし、人の出入りを制限した離宮に居たアデリアーデが毒をどこから手に入れたのか?仮に、手に出来たとして、誰が手引きをしたか?という二つの事が気になる。



それ以前に、あのアデリアーデが死を選ぶだろうか?。


アデリアーデという女は決して、自分の負けを負けと認めないタイプ。





それに、廃妃となっても、アデリアーデは、我が子であるアリファエルに、望みを抱いていた筈だ。


当のアリファエルからは、もはや見限られていたというのに、我が子なら自分を助けると、そう思っていた。



そんなアデリアーデが死んだ。


死因を疑わずに、何を疑えと言うのだろうか。




だが、考えた所で、初めから結論は一つしかない。






アデリアーデは、殺されたのだ。


多分、毒と知らずに、誰かから渡された物を飲んだのだろう。


では、誰がアデリアーデを殺したか?。



現状では、疑わしい者は、数多居る。


アデリアーデが死んで困る人間は少ない。

生前から、アデリアーデは沢山の人間に恨まれていた。


アデリアーデは気に入らない人間が居ると、策を弄し、その人物を破滅へと誘った。


傲慢であり、我が儘が過ぎる時に、ヒステリックになる女。




可憐で、清楚と言われた娘時代とは正反対の性格へと変わっていた。


だが、彼女が変わっていったのは、皇帝の責任なのかもしれない。


愛する男から、全く見向きもされぬ自分に、彼女は耐えられなかった。

愛を得れないならと、毒婦へと変貌した。


哀れな女と人は言う。



そして、皇帝は少し調べただけで、誰がアデリアーデに毒を飲ませたのか、誰が指示したのか、それが分かった。



アデリアーデ死亡時、本来なら、そこに居ない筈の人間が離宮に居た。


その人物の名はガウス。


長年、太皇太后マリアテレーズに仕え、マリアテレーズの懐刀と呼ばれ、人々から畏怖される男。




アデリアーデはマリアテレーズに、嫌われていた。


だが、今になって、何故、アデリアーデは殺されたのだろうか?。

マリアテレーズにとって、廃妃となった女に、用はない筈なのだ。

残酷な言い方もしれないが、廃妃となった女を殺す価値など、マリアテレーズには無い。

殺すならば、廃妃となる前に、殺している筈だ。


では、マリアテレーズは何故、この時期に、側近中の側近たるガウスをアデリアーデの元に向かわせたのだろうか?。


しかし、それを知る術を皇帝は知らない。


五十を過ぎても、色褪せぬ美しき薔薇の様な美貌を誇る義理の祖母たるマリアテレーズに、ある理由から皇帝は頭が上がらない。



例え、理由を問うても、答えてはくれないだろう。




数多の秘密と、策略を巡らせる義祖母。



もし万が一にも、マリアテレーズが本気で動いたなら、まず間違いなく、皇帝の方が廃されるだろう。




故に、皇帝はアデリアーデの件をこれ以上、詮索しない事とした。



娘の死に、疑問を持っているテンバール公爵も、真相を探る内に、薄々は察する筈だ。



この国では、太皇太后マリアテレーズに、逆らったら、生きてはいられないのだから。




対外的には、アデリアーデは廃妃された事で絶望し、自殺を選んだ。

と、そう発表される。





真相は闇に消え、多くの問題を残して、収束する。



アデリアーデの死に隠された残酷な真実を皇帝は知らないままになる。



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