BL小説「虜」
盾の事情
ガーメイル帝国四大貴族の一翼、北方大鴉ルース家当主クロス・グル・ルース。
皇帝が幼少の頃から、側に仕えてきた忠臣の一人であり、皇帝を守る盾と称される彼には、9才になる娘が一人居る。
だが、その娘を産んだ人の姿や、人となりを知る人間は少ない。
加えて、一人娘もあまり屋敷から出ない生活をしている。
四大貴族の他の3家に比べると、彼は貴族社会に生きている。
その為、四大貴族以外の貴族が催す夜会や会合などにも、よく顔を出すが、娘を伴う事は少ない。
武で皇帝を支えるのが、ガウディース家の者であるならば、文で支えるのが、ルース家に生まれた者の役目。
そんなクルスは最近、ある事に悩んでいた。
彼が今、悩んでいるのは、彼の娘カレンディラの事。
女児が少なくなっているこの世界では、女児が生まれる事は、嬉しい事である。
クルスにしたら、元気で生きていてくれたら、男であろうが、女であろうが構わないのだが、周りは、そう思わない。
カレンディラは、四大貴族の子供の中で、ただ一人の姫君。
彼女は彼女が望めば、未来の皇妃にすら容易くなる事が出来る位置に居る。
だから、カレンディラが生まれてから、今日まで、周りが騒がしい。
今は亡き廃妃も、三年前、カレンディラをアリファエルの妻にと、動いていた時期があった。
だが、クルスはその申し入れを毅然とした態度で断った。
三年前、カレンディラは、その話をクルスから聞いた時、クルスに言ったからだ。
「お父様。私、イヤ。アリファエル様を私では御支えできない。あの方は…お心に深い悲しみを抱かれているの…」
とても、当時6歳の子供が言う言葉ではないのだが、カレンディラは神童と呼ばれるほどに、聡明な少女なのだ。
そんなカレンディラだが、最近ではある事を知りたがるようになっていた。
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