BL小説「虜」
3
マリアテレーズへ静かに頭を下げ、側から離れた。
その足取りに、ブレはない。
今から、誰に何を飲ませに行くか、それを理解していながら、ガウスは歩みを止めない。
間違いなく、受け取った小瓶の中身は、毒だろう。
それを飲ませるという事は、死者を出すという事。
だが、ガウスはマリアテレーズの命令に背く事はない。
死を自分が運ぶ。
その事に、恐れはない。
ガウスは、今までの人生、清濁併せ呑んで生きてきた。
他人の命を絶つ。
そんな事は、何も今回が初めてではない。
勿論、強要された訳ではない。
彼は、自らの意志で、その手を汚してきたのだ。
ただマリアテレーズの為だけに、彼の人生はある。
守るべき主を守れなかったという過去が彼を変えた。
主であるマリアテレーズが修羅の道を歩む事を決めた時から、彼は絶対に守るのだと決めた。
何があっても、側に仕え続けると。
そう心に、深く誓ったのだ。
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