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BL小説「虜」
真実
「……」
バイスは、その言葉を聞き終えると途端、言いにくそうな顔で、視線をさ迷わせた。



そんなバイスに、アリファエルは。
「やはりか…」
と、小さな声で言った。







ガーメイル帝国皇帝と皇妃は完全なる政略結婚である。



その為、皇帝には皇妃に対して特別な感情はない。


しかし、皇妃は熱烈なまでに、皇帝を愛している。




皇位継承者が、アリファエルただ一人だけという事態は、アリファエルの身に何かあったらという焦りを下臣達に与えていた。


その為、再三にわたり、後一人は御子をと、臣下の者達は皇帝に願った。



が、その都度。



「もはや、余は皇妃を抱く気はない」
と、切り捨てられた。



でしたら、側室を持ってくださいと進言しても。
「要らぬ。余は誰も、これ以上は娶らぬ」
と、言われるという。




ガーメイルには、ある公然の秘密が存在する。


その秘密をアリファエルは一度だけ、たった一度だけ知る機会があった。


皇帝の自室には、隠された位置に、一枚の肖像画が置かれている。

その肖像画には、若き日の皇帝がアリファエルも見た事のない程の優しい微笑みを浮かべ、線の細い美しい青年と寄り添う姿が描かれていた。


その時、この絵の事は誰にも、聞いてはいけない事だと、アリファエルは小さいなりに感じていた。



しかし、どうにも気になり、その日の夜中に皇帝の自室へ、出向いて聞いた。


「父上。あの肖像画の方は、父上のなんですか?」
「いつ見た」
静かにそう聞く、皇帝に、アリファエルは答える。


「昼間、父上のお部屋で、偶然に見ました」

皇帝は、静かに答える。

「あれは…あの者は…私が唯一、愛する者。そう答えれば、お前は満足か?」



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