BL小説「虜」 考え リーフに滞在して、この一ヶ月の間。 アリファエル皇子は再三に渡り、父親である皇帝に、すぐさま帰国したいと要望を伝えていた。 しかし、すべての返事は一貫して。 「無駄とも思える様な時間も、今のそなたには、必要な事。故に、まだ帰国する事を許可できぬ」 そう返された。 苛立ちを隠せないアリファエルに、バイスは静かに話しかける。 「僭越ながら、アリファエル殿下。私が言える事があるとすれば、それはただ一つだけです。陛下は殿下に、下を見る大切さを知っていただきたいのだと、思われますよ」 「…下を見る?」 怪訝そうな顔をしたアリファエルへ更に、バイスは。 「まだ陛下が殿下と呼ばれていた頃『皇帝とは民の代弁者であり、常に良き指導者であらねばならず、だからこそ、広い視野で、物事を見る目が必要なのだ』と、言われた事がございました」 と、言った。 アリファエルは、バイスの顔を一瞬、見た後。 すぐに、窓の外へ視線を向け。 「…私とて、そう考えぬ訳ではない…ただ…私には、どうしても…父上がこの国に、こだわっていらっしゃる様に、見えるのが…不思議なだけだ……」 そう呟くように言った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |