BL小説「虜」
砕ける
ーガッシャーンー
「おっ、お止め下さいませ!姫さまぁ!!…」
「あぁ…何故…何故なの…!!」
ーダダッー
ーガンガンッー
アデリアーデは深紅の髪を振り乱して、苛立ちを声に出しながら、部屋中のあらゆる家具に当たり散らしていた。
「…姫様」
そんなアデリアーデの姿に、幼い頃からアデリアーデに仕える侍女のマリアは、言葉に詰まった。
錯乱状態にまでアデリアーデを追い詰めたのは、一通の手紙。
それは、アデリアーデが初めて皇帝から貰った手紙だった。
今まで、アデリアーデが出した手紙にさえ、返事をくれた事のない皇帝からの手紙。
嬉しさで震えた手は、すぐに違う震えとなりアデリアーデを襲った。
そこに書かれていたモノ…
それは…アデリアーデには、あまりにも残酷な通知。
「…私が…この私が…廃妃…だなんて…嘘よ……」
《近年の度重なる公務放棄及び身内を優遇し、優れた人材を埋没させた事により、国内を疲弊させた咎は大きい。よって、皇妃アデリアーデの位を廃し、廃妃となったアデリアーデの身柄は宮鎖(きゅうさ)へと移す事とす》
「…陛下…あなたは…そこまで、私が…厭わしい…のですか…?」
呟きは空に消える。
一方的な拒否。
変わる事のない二人の距離。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!