BL小説「虜」
2
優れた才能は時として、凶器となり、容易く自分や周りの人間を傷つける。
フィルデガルドの才も、それだった。
昔から、騒がしい程の情報に囲まれて育ったフィルデガルドには、本人が望む、望まぬに関わらず、ありとあらゆる情報が頭に流れ、誰かに会えば、その人の他人には知られたくないと思った事でも、容易く分かってしまった。
次第に、人々はフィルデガルドの才能を恐れた。
彼は、運命という存在から、あまりにも、強い力を与えられた。
だが、人々がフィルデガルドを恐れるように、フィルデガルドも、人の複雑な感情に恐怖した。
だから、10歳で必要な情報だけを聞き取る術を学び終えるまで、フィルデガルドの周りに‘友’と呼べる人間は居なかった。
術を学び終えるまでの間、何度もフィルデガルドは孤独を感じた。
しかし、その度、その孤独を癒し、フィルデガルドを救ってくれた存在があった。
それは動物達や様々な植物だった。
自然の営みに組み込まれているそれ等は、弱肉強食。
人間の様に、心に醜い野心や嫉妬など抱かない。
ただ自然に生きている。
だから、フィルデガルドも、安心出来た。
しかし、フィルデガルドの孤独は癒えはしたが、消えない。
術を学び終えても尚、人間の‘友’は未だに、出来ていない。
孤独を抱えた二人の少年。
運命の輪は廻る。
本当に、二人が出会った時、物語は始まる。
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