BL小説「虜」
〜畏怖されし力〜
フィルデガルドは前までなら、朝早く起きて、日の光の下を散策したり、思いのままに、歌を紡ぐ事は殆ど出来なかった。
彼はセルネス。
とても、優秀な星詠み。
自由な時間など、無いに等しい。
だが、今は違う。
彼の行動を縛るモノが無いのだ。
彼の不調を知った祖父エキウスが長めの休みをくれたのだ。
セルネスとして生まれ、今までは、セルネスとしてしか生きて来なかったフィルデガルド。
しかし、セルネスとしての能力が著しく低下している今、ただのフィルデガルドとして存在していた。
未来を紡げなくなって、初めてフィルデガルドは、自分だけの時間を味わうことが出来るようになっていた。
未来が見えない不安よりも、心地好い静寂が彼を包んでいた。
その日も、フィルデガルドは朝早くから散策に出掛けていた。
フィルデガルドの目に映る世界。
それは、生命の息吹に満ちた光輝く世界。
根を張り、艶やかな葉を茂らせる木々。
美しい草花。
そして、小動物達。
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