BL小説「虜」
〜一方的な出会い〜
その日。
皇太子は城の北側に位置する森へと来ていた。
その森には、奥に小さな泉があり、そこへ皇太子は小さい頃から息抜きの為に、よく訪れていた。
だが、その日に限って、いつもなら聞こえる鳥達の鳴き声も、小動物達の姿すら、森に入ってから見掛けなかった。
その事に、妙な違和感を感じながら、皇太子は泉へと向かう。
「ん?なんだ?…これは」
皇太子が泉に近づくにつれて、森の入口あたりでは、姿すら見掛けなかった小動物がその姿を見せはじめていた。
そして、更に近づくと、皇太子はある事に気づく。
「…歌?…」
泉の近くで、明らかに誰かが歌っていた。
微かに耳へと届く歌声。
優しい旋律のそれに、皇太子は興味を引かれた。
皇太子が静かに、その場へと近づくと、その人物は、真っ白な子兎を腕に抱え、色とりどりの鳥達に囲まれ、歌っていた。
金の髪は、風が揺れ、その顔は慈愛に溢れていた。
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