BL小説「虜」
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昔からガーメイルの貴族は婚礼前、婚約者に対して、ある贈り物をしなければならない。
しかし、貴族とはいえ、中には、自分達の能力で満足に金銭を稼ぐ事の出来ない者達や能力はそこそこあるのに、必要以上の浪費をする貴族達が居た。
だが、その家がどれ程、金銭的に切迫していたとしても、娶る方であれば、指輪以外の銀細工の装飾品と、その家が司る色の布に銀の針を嫁ぐ方へ贈る事は当然の事であり、嫁ぐ方は、その布と針を使って、手縫いでマントを作り、それを贈るのが決まりだった。
そして、贈られたマントは、華燭の時に着用され、以降は公式の場に出る際に着る礼服の一部となる。
一針、一針に想いを込め、縫われるそれは、特別な品物であった。
例え、施された刺繍が下手でも、贈られた方にしてみれば嬉しいのだ。
何故なら、それは他人の手を介さずに、自分一人で作ったという何よりの証拠。
普段、傅かれて生活する貴族の人間が初めて人の為に何かをする。
それは重要な事である。
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