BL小説「虜」
2
しばらくの間、ただ星を眺めていたフィルデガルドの耳に、舌足らずな声が聞こえてきた。
「兄上ぇ〜」
「兄上。どこですかぁ〜」
その声に、フィルデガルドは後ろへと視線を向け。
「ルド。こちらですよ」
と、声を掛けた。
「あっ!兄上ぇ。そこにおられたのですね〜」
こちらへと小さな足でトタトタと歩み寄る幼子。
その幼子の名は、ルドルフ。
フィルデガルドの歳の離れた異母弟。
自分の元へ歩いてくる弟に、フィルデガルドは慈愛に満ちた笑みを向けると、その目線に合わせてしゃがみ込んだ。
。
「父上がおよびですよぉ」
「そうか…では、ルドも途中まで、一緒に行くかい?」
フィルデガルドは、そう言うと、自分の右手をルドルフヘと手を差し出す。
「はい!ルドも、行きます」
すると、すぐにルドルフは嬉しそうに返事をして、フィルデガルドの手を取った。
異母兄弟とはいえ、この二人は実に仲の良い兄弟だった。
フィルデガルドにとって、肉親と呼べるのは、父親と祖父以外には、ルドルフだけであったから、ルドルフは異母兄弟ではあったが、疎ましく感じる筈はなく、逆に愛しく思っていた。
一方のルドルフも、10歳年上の兄フィルデガルドが大好きだった。
ルドルフにとって、フィルデガルドは、賢く美しいという認識があった。
ルドルフは、絶大なる信頼をフィルデガルドに寄せており、フィルデガルドも、ルドルフを庇護の対象として見ていた。
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