BL小説「虜」 3 セネガルは、1トーン低い声音で、バイスに問い掛ける。 「オレの事を…あんたが嫌いなのは…‘リアーツ’という名をオレが背負ってるからだろう?」 「…………」 だが、バイスは、その問いに黙したまま何も答えようとしない。 セネガルは、その沈黙をバイスなりの答えと受け取り。 「……いつからだろうなぁ…あんたが…オレを‘リアーツ’と他人行儀に呼ぶようになったのって…」 と、言った。 バイスは、一瞬だけセネガルの瞳に浮び、消えていった悲しみの色を見て、目を伏せた。 決して、割れた鏡は元通りには戻らない。 過去もまた……。 変わらない。 バイス。 セネガル。 この二人の人生。 何もなければ、どちらかが死するまで、共にある筈だった。 だが、今の二人の人生は、交わる事はない。 「リアーツ。殿下を頼んだぞ」 そうして、言いたい事だけを言うと、バイスは準備の為に部屋から出て行った。 部屋に残されたセネガルは、深いため息を吐きだし。 「…なぁ…あんたは…いつまで…縛られてる気なんだ…?」 と、呟く。 [*前へ][次へ#] [戻る] |