BL小説「虜」
希望の始まり
沙樹薬(さじゅやく)。
それは、人口が減少しているカーライル大陸で、人々の希望となった薬。
沙樹薬の原材料は、沙羅樹(さらじゅ)という木。
沙羅樹は元々、その根に、痛み止めの成分が含まれており、大陸では昔から広く、木の根っこを乾燥させた粉を薬として使っていた。
しかし、この薬。
かなり苦い上に、味覚が少しの間、狂ってしまうという副作用があった。
そんな中、五十年ほど前に、一人の植物学者が長年の研究の末に根っこ、樹液、それに数種類の薬草を混ぜ合わせて、ある新薬を作った。
その学者は、従来より飲みやすく、副作用の無い痛み止め薬を完成させたつもりだった。
だが、ある事が起きた。
何故だか、薬を飲んだ数人の若者達が体調を崩した。
数日の間、微熱と吐き気が続いた。
どうして、そんな症状が出たのか?と疑問を持った学者は若者達の身体を詳しく検査した。
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